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ステートメント 2025 年 9 月 24 日

デジタル市場法(DMA)がEU域内のユーザーに与える影響

Appleは人々に力を与え、生活を豊かにするテクノロジーを生み出すことに常に注力してきました。私たちは直感的で使いやすく、シームレスに連係し、人々のプライバシーとセキュリティを保護する製品を設計しています。また、2008年にApp Storeがオープンして以来、デベロッパと協力し、世界で最も活気があり、安全で、成功を収めたデジタルマーケットプレイスを作り上げてきました。
ヨーロッパの数百万の人々が、Apple製品が大好きで信頼しているという理由で、Apple製品を選択しています。デベロッパは、世界中のユーザーにアプリを届けて、ビジネスを成功させるためにApple製品を選択しています。これはヨーロッパでも世界中でも通用するモデルです。
しかし、デジタル市場法(DMA)により、Apple製品を設計しヨーロッパのユーザーに届ける方法について、いくつかの懸念すべき変更を迫られています。

デジタル市場法(DMA)について

デジタル市場法(DMA)とは、特定のテクノロジー企業が製品を設計する方法を再編成するために欧州連合が2022年に導入した規制です。DMAには多くの規則が含まれますが、それらの規則を適用する方法は企業ごとにまったく異なるように見えます。
Appleの場合、アプリのダウンロード方法やアプリでの決済方法、さらにApple製品を連係させる方法まで、DMAはEU域内のユーザーにとってのApple製品の体験に多くの点で影響をもたらしています。
この数か月間、DMAに関する権限を持つ欧州委員会は、企業やEU市民からこの法がもたらす影響について、さらに多くのフィードバックを募っています。そこで私たちは、すでに目にし始めた変化や、今後想定されることについて、EU域内のAppleユーザーに最新情報を伝えたいと考えました。

DMAがEU域内のAppleユーザーに与える影響

機能提供の遅れ
DMAはAppleに対し、特定の機能について、自社のユーザーが利用できるようになる前に他社の製品やアプリでも使えるようにすることを求めています。残念ながら、それには多くのエンジニアリング作業が必要になるため、EU域内では以下のいくつかの新機能の提供が遅れました。
  • AirPodsを使ったライブ翻訳は、Apple Intelligenceを活用し、Appleユーザーが様々な言語間でコミュニケーションをとれるようにします。このような洗練された機能をほかのデバイスでも使えるようにするには様々な課題があり、解決に時間がかかります。例えば、ライブ翻訳はユーザーの会話内容のプライバシーを保護するために、会話をデバイス上で処理し、Appleが決してアクセスできないように設計されています。さらにAppleのチームは、会話が他社やデベロッパにもさらされることがないよう、追加のエンジニアリング作業を実施しています。
  • iPhoneミラーリングを使うと、ユーザーはMacからiPhoneの表示や操作ができるので、シームレスに通知を確認したり、写真をデバイス間でドラッグ&ドロップしたりできます。Appleのチームは、ユーザーのiPhoneにあるすべてのデータを危険にさらすことなく、この機能を他社製デバイスに対応する安全な方法をまだ見つけてられていません。そのため、この機能はEU域内にはまだ提供できていません。
  • また、位置情報をデバイス上に保存し、ユーザーだけがアクセスできるように設計された、マップの訪問した場所よく使う経路などの便利な機能も、提供を遅らせなければなりませんでした。現在、Appleのチームはユーザーの位置情報を開示する(私たちはそれを実施するつもりはありません)ことなく、これらの機能をほかのデベロッパと共有できる方法をまだ見つけられていません。
Appleはこれらの機能に対して、ユーザーのデータを保護するための変更を提案しましたが、現時点で欧州委員会はその提案を却下しています。欧州委員会によると、DMAのもと、他社の製品でも使えるようにするまでは、私たちがAppleのユーザーとこれらの機能を共有することは違法になります。それ以前に機能を共有した場合は、制裁金を科せられ、Apple製品のEU域内への出荷を停止するよう強制される可能性があります。
私たちはヨーロッパのユーザーに、ほかのすべての人と同時に同じ革新的な機能を楽しんでもらいたいと願っており、DMAによってその実現が遅れるとしても、これを実現するために闘っています。しかし、DMAによって、EU域内での提供が遅れる機能のリストはさらに長くなるでしょう。そして、EU域内のユーザーのApple製品での体験はさらに遅れをとることになります。
よりリスクが高く、直感的な使いやすさが低下したアプリ体験
Appleは常に、ユーザーにとって安全で信頼できるマーケットプレイスになるよう、また、デベロッパにとっては素晴らしいビジネスチャンスを生み出せるように、App Storeを運営してきました。DMAにより、EU域内のユーザーは以下のような影響を受けます。
  • アプリのダウンロードや決済時におけるリスクの増加:DMAはAppleに対し、App Storeと同等のプライバシーとセキュリティに関する高い基準を満たさない場合でも、サイドローディングや別のアプリマーケットプレイス、代替決済システムを許可するよう求めています。ほかのモバイルプラットフォームでは、ユーザーは偽のバンキングアプリを通じて拡散される詐欺行為や、ゲームに偽装したマルウェア、過剰請求をされても返金方法がない他社製決済システムに直面しています。DMAの要件によって、EU域内のAppleユーザーが同様のリスクにさらされる可能性が高まります。
  • 直感的な使いやすさが低下した体験:信頼できる1つの場所でアプリを入手する代わりに、EU域内のユーザーは、それぞれ独自のデザイン、ルール、レビュー基準を持つ複数のマーケットプレイスと向き合うことになります。ほかのモバイルプラットフォームでは、こうしたことが、審査プロセスがより少ないことですり抜けた有害な偽物のアプリや、問題が起きてもどこに連絡すればよいかわからないマーケットプレイスへとつながります。EU域内のAppleユーザーは、同様のリスクに直面する可能性がさらに高まります。EU域内のユーザーは、アプリの提供元や責任者、問題が発生した際に適用される保護について知るのが一段と難しくなります。
  • 有害なアプリへの新たな接触:今回初めて、iPhone上でほかのマーケットプレイスからの複数のポルノアプリが利用可能になりました。これらは、特に子どもにもたらすリスクを理由に、App Storeでは決して許可してこなかったアプリです。その中には、今年AltStoreで発表されたポルノアプリHot Tubが含まれています。また、DMAにより、法律で禁止されている地域で賭博アプリがiPhoneにインストールされました。
私たちはApp Storeを、すべてのアプリが審査され、すべてのデベロッパが同じルールに従い、保護者は子どもを守るためのツールを入手できる、中心的で信頼できる場所として構築してきました。私たちは、今もなおユーザーが期待する質の高い体験を守るために闘っていますが、DMAはそのモデルを変更するよう強制しています。そしてそれが、EU域内のAppleユーザーに対し、より複雑で、より多いリスクを生み出しています。
プライバシーとセキュリティへの新たな脅威
また、DMAでは、他社がApple製品のユーザーデータや中核となるテクノロジーへのアクセスをリクエストすることを認めています。それがユーザーにとって深刻なリスクをもたらす場合でも、Appleはほぼすべてのリクエストに応じるよう求められています。
現在、他社はユーザーのiPhone上にある最も機密性の高いデータの一部に対してリクエストを提出しています。そのうち最も懸念されるのは以下のものです。
  • ユーザーの通知の完全な内容:このデータには、ユーザーのメッセージ、Eメール、医療関連のアラート、その他ユーザーが受け取るすべての通知の内容が含まれます。これにより、現在Appleでもアクセスできないデータが他社に公開されることになります。
  • ユーザーが接続したWi-Fiネットワークの完全な履歴:Wi-Fiの履歴はユーザーの位置情報や活動に関する機微な情報を明らかにする可能性があります。例えば、企業はその履歴を使って、ユーザーが特定の病院、ホテル、不妊治療クリニック、裁判所を訪れたかどうかを追跡できます。
大企業はさらに多くのデータを収集するために引き続き新しいリクエストを提出しており、EU域内のAppleユーザーが監視されたり追跡されたりするリスクがさらに高まっています。Appleのチームはこのようなリスクを欧州委員会に説明していますが、今のところ、プライバシーとセキュリティに関する懸念はリクエストを拒否する有効な理由として認められていません。

DMAは目的を達成しているか

規制当局は、DMAが競争を促進し、ヨーロッパの消費者により多くの選択肢を与えると主張しています。しかし、DMAはこれらの約束どおりに機能していません。実際、それとは逆の影響がいくつか出ています。
  • 選択肢の減少:機能の提供が遅れたり利用できなかったりすると、EU域内のユーザーは世界のほかの地域のユーザーと同じ選択肢を得ることができません。Appleの最新のテクノロジーを使うという選択肢を失い、デバイスも新しい機能が使えない遅れたものになってしまいます。
  • 弱まる差別化:Appleに他社製品向けの機能やテクノロジーを作るよう強制することで、DMAはヨーロッパの消費者の選択肢をより似通ったものにしています。例えば、アプリマーケットプレイスへの変更により、iOSがAndroidと似通ったものになり、選択肢が減ります。
  • 不公平な競争:DMAの規則はAppleにのみ適用されていますが、ヨーロッパのスマートフォン市場を牽引しているのはSamsungであり、中国企業は急速な成長を遂げています。Appleは、あらゆる場所のユーザーがメリットを得られるように、他社の手本となるユニークで革新的なエコシステムの構築を主導してきました。しかし、そのようなイノベーションに対して見返りを与える代わりに、DMAはAppleのみを名指しし、競合他社にはこれまで通り制限を課していません。
DMAのもと、欧州委員会による規則の解釈は常に変化しています。そのため、企業がそれらの規則に準拠する方法を知ることはほぼ不可能です。
DMAの要件に対して異議がある場合、その変更がユーザーに取り返しのつかない危害を与えるとしても、企業は裁判所の判断が示される前に、欧州委員会による変更を受け入れなければなりません。裁判所の判断が示されるには数か月から数年かかる場合があります。そして、それに従わなかった場合の罰則は、著しく独断的です。これらは不平等に適用され、競争を促進するのではなく企業を罰することを目的としています。
年月が経つにつれて、DMAが市場の役立っていないことが明確になっています。DMAはヨーロッパでビジネスを営むことを困難にしています。

DMAに対するAppleの見解

デジタル市場法(DMA)が施行されてから1年以上が経過しました。その間、DMAによりEU域内のAppleユーザーの体験がさらに悪化していることが明らかになっています。ユーザーを新たなリスクにさらし、ユーザーのApple製品を連係させるシンプルでシームレスな方法が妨げられています。新たなテクノロジーが登場しても、EU域内のユーザーのApple製品はそれに取り残されるばかりです。
また、DMAはヨーロッパ市場に役立っているともいえません。イノベーションを起こすことで競うのではなく、すでに成功を収めた企業がEU市民からさらに多くのデータを収集する、またはAppleのテクノロジーを無料で入手するという自社の意図に沿うように法律をねじまげています。
DMAへの懸念に反して、Appleの社内チームはDMAの要件を満たしながら欧州連合で新機能を使えるようにするために膨大な時間を費やしています。しかし、DMAがもたらすあらゆる課題をすべて解決できないのは明らかです。
そのため、Appleはこの法が日常的にApple製品を使うEU市民にどのような影響を与えているかを詳しく確認するよう、規制当局に要請しています。世界のその他の地域に提供しているのと同じ水準で、EU域内のユーザーがAppleのテクノロジーについて最高の体験をできるようにすべきだと私たちは考えています。そして、そのような体験を提供するために、私たちはこれからも闘い続けます。
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japan_press@apple.com